岡健司(町田市玉川学園在住)


町田焙煎珈琲株式会社
(店舗名) Coffee Factory Hill’s Cabo
開業:2011年2月
住所:町田市本町田3450-12

岡健司さんのご両親の出身地は奄美大島で岡さんが生まれたのは大阪。世田谷の経堂を経て、町田市玉川学園に引っ越して、南大谷中、桐光学園高校、中央大学で学ぶ。八王子にあった中央大学商学部では100人を超える学生が集まる中江剛毅ゼミに所属する。中江ゼミは中央大学の中でもユニークなゼミで、企業の製品やサービスの大規模なブランド調査をゼミ生総がかりで常時やっていたそうだ。その中で岡さんはパソコン班に所属し、PCやソフトウェアの技術を身に付ける。このことが岡さんの職業人生を決定づけることになる。

大学を卒業し、ソフトウェアサイエンス社に入社し、人事部で採用担当を3年近く経験する。その当時は売り手市場で九州や山陰地方に出向いては大学や工業高等専門学校を回り、新卒集めに汗を流していたそうだ。また、社内の新卒者にプログラミングを教えたり、医療系専門学校でも講師を務めたそうだ。採用担当からシステム開発担当となり、チームを束ねて大手メーカーの鉄道系の開発などもやったそうだ。その頃、データベース管理ソフトウェア市場で圧倒的なシェアを誇るオラクルが認定するオラクルマスターの資格も取得している。

30歳の時転機が訪れる。町田にあった奥さんの実家の蕎麦屋を継ぐことになり、ソフトウェアサイエンス社を退職する。ところが、蕎麦の修行を始めると体中にじんましんが。蕎麦アレルギーと分かり、蕎麦屋の跡を継ぐことを断念する。もし蕎麦アレルギーでなかったら、岡さん、今頃は関東で名の知れた蕎麦屋の親父になっていたのかもしれない。蕎麦屋を諦めた岡さんは日本でカナダ人が起業したグローバルオンラインJAPAN社に就職する。ここはインターネットサービスプロバイダーの会社。ここではオラクルを使った顧客管理データベースの構築を担当する。その後、三井物産デジタル、フュージョンネットワークサービス、フュージョンコミュニケーションズ(現楽天コミュニケーションズ)などで活躍するが、45歳で起業を志す。

会社を辞めて起業した理由は顧客の顔が見えるリアルな商売がしたかったから。役職にも付き収入は増えたが、仕事は会社や部下の管理で、直接顧客に接することも、ものづくりに携わることも無く、物足らなさを感じていたのではないか。ほとんどのサラリーマンはそれを受け入れて職業人生を終えるわけだが、岡さんは別の道を選んだ。商売でも誰かが作った商品を右から左に売るようなことはしたくなかった。そして、たどり着いたのがコーヒーの焙煎。アリゾナでコーヒーのおいしさを知り自己流で焙煎を始めたのがきっかけだそうだ。会社に勤めながら、軽井沢珈琲倶楽部の小野善造さんに師事、週末にコーヒー焙煎の修行に励む。1年近く修行し、2011年2月に開業。焙煎機は小野善造さんが設計・製造したマシン「GRN熱風式焙煎機」を導入。この焙煎機、かなりの高額マシンらしい。自宅の隣にフィンランドから輸入した小さなログハウスを組み立てて商売を始める。玉川学園周辺にチラシを大量に配布したこともあり初日は行列ができたそうだが、一般客を対象とする商売に限界を感じ、2年目からカフェなどを対象とした商売に切り替えることになる。地元の繋がりがほとんど無かったので商工会議所や異業種交流会にも積極的に入り、取引先を開拓していったそうだ。3年目位から取引先も増え、今は市内外の25か所のカフェ・レストランなどにコーヒー豆やオリジナルドリップパックを卸している。自宅近くに焙煎工房を兼ねた店舗を構え小売もやっているし、ネット販売も手掛けている。コーヒー豆はもちろんのこと、オーダーメイドのオリジナルドリップパックはとても評判がいいそうだ。

7歳から町田で育ち、奥さんの実家も町田のお蕎麦屋さん。そしてコーヒー焙煎の商売も町田が基盤。そんな町田に恩返ししたいという気持ちが年々強くなっている。FC町田ゼルビア、ペスカドーラ町田の応援、「ゼルビアブレンドコーヒー」や町田市名産認定品「薬師ブレンド・まほろブレンド」、小山田にある福祉施設との業務提携などコーヒーを核とした町田の街や人と繋がる活動をドンドン拡げている。町田愛が溢れる岡さんの次の一手がとても楽しみだ。

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岡さんにはマチノワでコーヒーのワークショップを開催していただきました。私も受講し、それ以来コーヒーの美味しさや奥深さに魅入られています。どちらかというと紅茶が好きだったのですが。お気に入りは「エチオピア・イリガチェフェナチュラル」です。マチノワのお客様もとても喜んでくれます。岡さんにドリップの作法を一から教えていただいたおかげです。(インタビューを終えて/マチノワ山本満)