神成大樹(町田市中町在住)

株式会社BRAIN MAGIC

神成大樹さんは町田在住のクリエイター、兼クリエイター向けの作業負荷軽減のハードウェア「Orbital2(オービタル2)」を開発している株式会社BRAIN MAGICの代表取締役。生い立ちから現在まで、力強い人生の一端を聞くことができました。

■学生時代
・どのような子供時代でしたか?
神成さん―
私の両親が非常に教育熱心だったので、ゲームを買ってもらえず学校ではコミュニケーションが上手くいかず寂しさを覚える時もありましたが、ブロックや囲碁のような知育玩具は積極的に買ってもらえ、今思い返すとそれが自分の創造力を養う上でとても良かったと思います。
また、元々毎日同じ場所に行って、人の話をずっと聞く、ということが辛くて、学校に合わないと感じていたので、学校に行かない期間もありました。

・いつ頃から工学系の制作を始めたんですか?
神成さん中学に上がった頃、自分のパソコンを手に入れ、3DCGで映像を作り始めました。パソコンのソフトやCGのソフトがとにかく高額で、仲間と知恵を出し合って資金を集めました。

・中学生から!すごい行動力ですね。高校に進学してもグラフィックの制作を続けていたんですね?
神成さん―そうですね、コンピューターグラフィックスの作品制作などを続けていて、自分の作品をコンクールに出すようになります。この頃からCG映像制作の依頼が来るようになりました。また、自由研究で二足歩行ロボットの製作をして、3年生の時にはちゃんと歩くところまで作り上げることができました。その自由研究で、学校の発表会では学園長賞をもらったりと、結構色々とやっていましたね。

・高校生とは思えない経験をされていますね。大学では研究などされていたんですか?
神成さん―大学は、実は少し後悔していることがあって…(笑)入った学部と自分の学びたかったことが違っていて、もうひたすら自分でコンピューターグラフィックスをやっていました。(笑)
学校の教室で、友達と好きなものを作って過ごしていたんです。
プログラミングをやる友人や、音楽制作が得意な友人など、私の周りにクリエーターがそろっていて、卒業してから3年間はそれぞれ武者修行して、3年後に一緒に会社を立ち上げようと約束しました。

■大学卒業後
・才能あるご友人たちと、素敵な約束があったんですね!
神成さん―そうなんですよ。ただ、その約束通りには進んでいなくて、3年間勉強して、それから集まろうって話していたんですが、友人の1人が入社した会社が半年で倒産してしまって、、、クライアントも困っているので、このタイミングだったら、この会社が持っていたネットワーク全部引き継いで会社を立ち上げられるぞ、となって、約束の3年よりも大幅に計画を変更して起業することになりました。
最初は4人で集まって、私たちの会社がスタートしました。

・3年後の約束が半年後になるなんて、すごいタイミングでしたね。
神成さん―驚きですよね。みんな今までフリーランスで仕事をやっていたので、技術はあるけど経営のスキルが無くて、経営で困る場面が出てきてしまいました。それで経営の勉強をちゃんとしよう、と話して、それぞれ経営の勉強を始めたんです。
僕はビジネスを勉強しようと思って、デジタルハリウッド大学院の社会人大学院生として入学しました。入学したら想像もしていなかったことも学べたので、本当にいい経験となりました。

・そうなんですね。一番印象的だった授業は何でしたか?
神成さん―プロダクトプロトタイピング演習という授業ですね。この授業を受けた瞬間に、これまでクリエイターとして自分が課題にしていた様々なことが解決できるのでは、と思えたんですよね。
当時の私は、日中は会社で働きながら、夜間は大学院の勉強があり、両手が腱鞘炎になってしまっていて、この辛い環境をどうにか改善したい、と思っていました。その思いがこの授業を通して、何か作れそう、と思えました。
研究がスタートして、先生方のサポートをいただきながら「Orbital2(オービタル2)」のプロトタイプを作ることができました。
大学院の終了発表会でこの研究を発表したところ、この製品だったら購入したい、という声が集まり、商品化に進むことになりました。

・ご自身の問題意識と大学院の授業との出会いが、「Orbital2(オービタル2)」開発のきっかけになったんですね。
神成さん―そうですね。デジタルハリウッドも出資してくれることになり、本格的に資金調達、製品開発が進んでいきました。今までの会社とは別の仕事内容なので、新しく会社を立ち上げ、迷惑が掛からないようにしましたね。それからは投資家の方々に会いに行ったり、クラウドファンディングで資金を調達しました。

・資金調達までご自身でされたんですね!
神成さん―初めてのクラウドファンディングでした。そのお礼が製品だったので、期日に間に合わせようとみんな必死でした。
ようやく製品を皆さんへお届けできて一安心していたんですが、ここからが地獄の48時間の始まりでした…(笑)
製品を動かすソフトウェアはご利用者がそれぞれネットからダウンロードしてもらうんですね。いよいよお客様のダウンロードが始まった、という瞬間に、サーバーを止めないといけないトラブルが発生したんです。しかしサーバーを止めてしまったらお客様はダウンロードができない。ダウンロードできなかったら、そもそもこの製品が使えない、という状況に陥りました。
私はお客様一人ひとりにサポートメールを送ろうと決断し、当時のお客様は300名位に、ソフトウェアをダウンロードして稼働できるまで、それぞれ個別にサポートしました。深夜3時位にメールが来ても、それから5分後にメールを返信して、朝5時までサポートする、ということをし続けた結果、お客様からは「こんなに早くサポートしてくれるとは思ってませんでした」という感謝の言葉もいただきながら、48時間、何とか乗り切りましたね。
その後半年は一般販売はせず、その300名の方々がうまく使い続けられているかサポートし、要望を聞き取りました。
その後予約販売や量販店販売もスタートし、皆さんにお届けできるようになりました。

・不眠不休の48時間サポートは本当に壮絶ですね。本当に多くのご経験をされてきていますが、神成さんの強みはご自身ではどこだと考えてますか。
神成さん―そうですね、、、「よくメンタル強いよね」と言われるので、そこですかね。この辛い経験や、資金調達や商品開発・製造の中で、一つひとつ課題を乗り越えてきたことが、メンタルの強さに繋がっていると思います。
多分普通の人ならもうやめよう、とか、逃げよう、と思う瞬間でもやっていけるのは、いろんな経験をしすぎていて、むしろ感覚が麻痺してしまっているのかも知れませんね。

・経験からくるメンタルの強さが神成さんの成功の秘訣なのですね。貴重なお話をありがとうございました!

■インタビュー後記
非常に面白い話ばかりで、インタビューがとても盛り上がってしまいました。長時間ありがとうございます。
神成さんの発想の柔軟さと、突出した行動力を見たインタビューとなりました。
今後もクリエイターとして生きていきたいと最後に語っていた神成さん、今後の人生もとても気になりますね。
(インタビュー・文 田中しおり)