インタビュー 大浦絢子さん
大浦絢子さんは横浜市生まれ。地元の小学校を経て中学校、高校は都内の学校に通う。中学校、高校ではバレーボール部に入って活躍するが小学校6年から始めたテニスの方が性に合っていたらしく今でもテニス仲間やクラブで休日の楽しみにしている。
高校を卒業し、青山学院大学理工学部に進む。母親も同校の理工学部で学び、現在は高校で物理を教えているそうで、大浦さんはその血を引いたのだろう。理工学部の機械創造工学科に進み、3年からは経営工学の研究室に入っている。この選択が今の大浦さんの進む道に影響を与えている。この研究室で出会った研究者に勧められて早稲田大学大学院人間科学専攻に進む。ここで「トヨタ式カイゼン」の手法を使った介護スタッフの働き方改善の研究に取り組む。研究室の仲間とともに多くの介護施設を回りアンケート調査や聞き取り調査、生化学的検査を重ねた。大浦さん達がその調査をもとに業務改善を提案した結果、スタッフの満足度の向上や会議の効率化が図られるなど多くの成果を産み出したそうだ。結果は修士論文「介護施設の職員の働き方改善」としてまとめられている。博士課程に進み、学術振興会特別研究員として研究を続けながら外部講師や医療系ベンチャーのリサーチャーなどを経験する。
その後、早稲田大学人間総合研究センターを経て東京都健康長寿医療センターの研究員に就く。同時期に子どもを産み、子育てをしながらも博士学位を取得する。同センター退職後は、独立系研究者としてAcademic Research Supportを開業する。Academic Research Supportは修士課程や博士課程で学ぶ学生や医療従事者等の研究支援を行う。前職は都心にあり通勤時間も長く、子育てに支障があったことから、自宅で仕事ができないかと考えていた時、思い浮かんだのが学術研究を支援するこの仕事。大浦さんは、大学院時代に研究方法やデータ解析、論文に苦労している社会人学生の相談に乗り、よく手伝っていたので、ここにビジネスチャンスがあると思った。在職中に仕事を仲介するサイトを使ってリサーチするとかなりの需要があることが分かったそうだ。
事業を始めると最初からかなりの引き合いがあった。その多くは医療や福祉現場で働く社会人学生だった。1年目で前職の収入を超えた。徐々に一緒に事業をやりたいという研究者も現れ、4年目の現在では20名以上の研究者がこの事業に参画している。仕事の依頼は自社サイトを見てくれた人、google広告経由の人、知人からの紹介といった具合だ。2021年には、Academic Research SupportをARS株式会社へと法人化し、追って一般社団法人を設立し、この活動に多くの研究者が制約なく参画できる体制も整えた。今後も支援の対象を広げていきたいし、多くの研究者が集うことで多分野協働での共同研究をはじめとする様々な活動に繋げていきたい。研究者自身の職の幅もARSをとおして広がればと考えている。
現在大浦さんは、文部科学省国立教育政策研究所に勤務しており、事業は代表から辞任し、上級顧問として事業の発展に貢献している。
(インタビュー・文 / 山本満)